Blogs

大企業とスタートアップの連携を成功に導く「電通グルー・スプリント for CVC」

 近年の大企業の新規事業立ち上げでは、プロダクトやサービスの新規性をテクノロジーで実現するため、テック系のスタートアップ企業と協業することがある。オープンイノベーションで、大企業は自社だけでは調達できないアイデアや人材にアクセスできるし、スタートアップ企業は大企業のアセットを活かして更なる成長ができる。コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)は自社の事業部門を拡張させたり、変革するスタートアップ企業に多く出資してきたはずだ。

「でも、期待通りにはいかないんです。協業ってうまくいかないですよね」と皆さん口を揃えて仰られます。

 うまくいかない理由は三者それぞれにある、と森下氏はいう。

 まず、事業会社がスタートアップと組むのは、既存事業を拡張/変革したいからだ。成長に限界を感じて未開拓の余白を探すものの、自社で何もかも開発は難しいから、オープンイノベーションでやってみようとする。しかし、既存事業を守りながらスタートアップと組むことになる。スタートアップは、構想段階を経て最初のプロダクトをリリースしたあとは、とにかく成長を優先し大企業と組むことも増えてきている。資金を調達し、顧客を増やすことに専念して、早く成長したい。ここでシナジーを期待したCVCが出資しても、両者の思惑は最初から異なる。何かうまくいっていないとは感じても、CVCは事業会社にもスタートアップにも口を出しにくい。大企業が生み出したい拡張/変革と、スタートアップのプロダクトがうまくかみ合わなければ、結局、期待したようなシナジーは起きず、せっかくの新規事業はなかなか世の中に受け入れられない。

 森下氏のチームが用意しているプログラム「電通グルー・スプリント for CVC」(グルー・スプリント)は、このタイミングで必要とされる。

ビジネスの開発・設計に、ブランディングのノウハウを適用する

 グルー・スプリントの提供価値の中心となるのが、電通のクリエーターが持つブランディングのノウハウだ。

「電通は広告ビジネスをやってきた会社です。主なお客さんは企業のマーケティング部門。ブランドをどう知ってもらうか、好きになってもらえるかをクリエイティブで解決してきました。一方で、グルー・スプリントのパートナーは事業開発や経営企画部門ですが、私たちクリエーティブが提供する本質的な価値は変わりません。協業を成功させるためのビジョン策定、デザイン戦略、体験コンセプト設計を、生活者を意識したクリエーティブ視点で磨き上げていきます。」

なぜ、ブランド作りのためのクリエイティブが新規事業の成功に結び付くのだろうか?

「事業会社にもスタートアップも、それぞれに事情やステークホルダーがあり、生活者の視点が疎かになりがちです。グルー・スプリントが事業会社、スタートアップ、CVCを結びつけて、新規事業を成功に導くお手伝いができるのは、電通のクリエイティブは常に生活者視点で考え抜き、どうすればクリエイティブに触れた生活者の心が動くか、を真剣に考えてきたからです。世の中の人のキモチや時代の潮流をふまえ、こうあるべきだ、というビジョンが強化されることで、立場を超えて、プロダクトの本質的価値を三者+生活者が共有できるようになるのです」  クリエイティブを担当する槙島氏は「ブランドは企業が考えるものですが、実態は生活者のココロの中に形成されていきます。サービスも、生活者に使い続けてもらうことで初めて存続できます。なので本来はビジネス開発の初期段階で、サービスやプロダクトにブランドを埋め込むべきなんです。」という。

 グルー・スプリントでは、広告企画を制作するときのように、クリエイティブ・ディレクターを中心にチームが組成され、アライアンス・ビジョンの開発や、プロダクトにとって最適なビジュアル、コピー・ライティング、UXが設計され、関係者のイメージを揃えていく。関係者の目線が揃うから、経緯への過剰な配慮、予断によるブレがなくなる。結果、プロダクトのあるべき姿が可視化され、ステークホルダー間の意識のズレは解消し、ビジネスの成長に向けて着地できる。

「事業開発の分野で、電通は相談相手として真っ先に思い浮かぶ会社ではありません。しかし、マス・コミュニケーションを通じて培ってきた、生活者に想いを伝えるためのノウハウ、本質的なコミュニケーションの知見は、愛されるプロダクトを作る方法論でもあるのです。新しい価値を生み出すというクリエイティブの本質は、事業開発にも通じる。コンサルティング会社とは違って、コンセプトからプロダクトまで一気通貫で、世に出ることを想定しながらお手伝いできるのが電通の強みです」

 ビジネス開発にブランディングの視点を入れることによって、企業がすべきことがわかる。そうすると、ビジョンが明確になって、次の一手がわかるし、逆にしなくていいこともわかる。「理解が整理されるんです。事業会社やスタートアップの方が外向けに発信されるときも、どういうプロダクトなのか明確に伝えやすくなる、という効果もあります」と槙島氏はいう。

「グルーは接着剤。事業部門とスタートアップをくっつけるのが我々の役割です。コンサルティング会社だと、助言しました、資料を出しました、あとはがんばってください、フィーはいくらです、という形になるでしょう。グルー・スプリントだと、そうとも限りません。電通もそのビジネスにジョインする場合もある。例えば、フィーではなく、レベニューシェアにしましょう、むしろ投資します、またそのミックスなど様々な付き合い方が可能です。スプリントは短距離走。電通が関わることで、新規事業がスピード感をもって進んでゴールにたどり着く。そういう価値提供をするのがグルー・スプリントなんです」

森下 治秀
株式会社電通
ビジネストランスフォーメーション・クリエーティブ・センター
ビジネス・ディベロップメント部 部長

2013年電通入社。大手企業とスタートアップとの協業を支援するクリエイティブ・サービス「電通グルー・スプリント for CVC」の展開、事業開発に従事。クリエイティブ発想の事業開発/プロダクト・マーケティング。事業変革プログラムの企画/運営。大手事業会社のUI/UXプロジェクト・リード多数。IVS LAUNCHPAD 2013 登壇。グッドデザイン賞、日本オープンイノベーション大賞など受賞。

大企業とスタートアップの連携を成功に導く「電通グルー・スプリント for CVC」

Contact

事例紹介や詳しい説明など、
お気軽にお問い合わせください。

Contact